『名探偵コナン』の登場人物の名前は、推理小説やサスペンスドラマで活躍した人物に由来しています。それぞれの名前を紐解いていき、その真相を探っていきましょう。
主要の登場人物
江戸川コナン
主人公の江戸川コナンは、工藤新一が毒薬で小さくなってしまった時、蘭に名前を聞かれてそばにあった『江戸川乱歩』と『アーサー・コナン・ドイル』の本を見て、とっさにつけたものです。正体を隠さなければならず、また蘭が心配のあまり新一の家に寄ったので、名前を考える時間の余裕が無かったのかもしれません。
『江戸川乱歩』は対象から昭和にかけて推理小説を得意とした小説家。明智小五郎シリーズや少年探偵団、怪人二十面相を生み出した作家でもあります。『アーサー・コナン・ドイル』は、イギリスの小説家であり、シャーロック・ホームズの生みの親でもあります。コナンというのは実は姓であり、大叔父様から頂いたものだそうです。
ちなみに、宮崎駿監督が製作した『未来少年コナン』にもコナンという主人公が出てきますが、これは原作の『残された人びと』の主人公の名前がコナンであり、江戸川コナンと関係性や偶然ではありません。
また、『名探偵コナン』が漫画化される際も、『未来少年コナン』と被るから『名探偵ドイル』としろという編集局からの依頼もありましたが、青山剛昌先生は「コナンは語呂が良いから」という事で押し通したようです。『名探偵ドイル』になっていたら、物語の展開や、メディアコンテンツも違う方向に行っていたかもしれませんね。
工藤新一
江戸川コナンの正体である、工藤新一をはじめとした工藤家。工藤という苗字はドラマ『探偵物語』に登場する主人公工藤俊作から拝借したものです。新一という名前は、青山先生が語感でつけたとされています。
工藤優作
新一の父親で、世界をまたにかける推理小説家の優作は、探偵物語で主人公工藤俊作を演じた、俳優の故・松田優作氏から拝借したものです。
松田優作氏は探偵物語以外でも、『太陽にほえろ!』の柴田純刑事(通称・ジーパン)役も演じており、刑事ドラマやサスペンスドラマに様々な作品に出演されていました。息子である松田龍平さんと翔太さんは、父と同じ俳優として現在も活動しています。
工藤有希子
新一の母親で、元女優として活動していた有希子は、アニメ『ルパン三世』で初代峰不二子役を演じた女優の二階堂有希子さんから拝借したものです。
また、旧姓の藤峰も、峰不二子から拝借したものです。ちなみに二階堂さんは女優業を引退なさっており、クイズ番組の司会として活躍した俳優で夫でもある柳生博さんとともに、山梨にある園芸施設『八ヶ岳倶楽部』を運営しています。
毛利蘭
『名探偵コナン』のヒロインである毛利蘭と、その父親の小五郎。苗字と蘭の名前の由来は、アルセーヌ・ルパンを生み出した作家、『モーリス・ルブラン』から拝借したものです。
モーリス・ルブランはフランスの作家。シャーロック・ホームズのアンチヒーロー的存在として、アルセーヌ・ルパンを生み出したそうです。ちなみにルパン三世は彼の孫という設定です。
毛利小五郎
コナンがいないと名探偵としての名声もない、蘭の父親小五郎。小五郎の由来は、江戸川乱歩の小説に登場する私立探偵、明智小五郎から拝借しています。劇中に出てくる『少年探偵団』も、江戸川乱歩からの小説から拝借しています。
ただ、作中で小五郎はコナンや子供たちを事件に巻き込みたくない大人として見ているようで、煙たがれているようです。
妃英理
蘭の母親で、小五郎の妻でもある弁護士の妃英理。現在は旧姓の妃を名乗っていますが、戸籍上や本名は毛利英理であると劇中で語られています。名前の由来は、アメリカの推理作家、『エラリー・クイーン』から。
実はエラリー・クイーンは、本名ではなくペンネームであるという事はご存知でしたでしょうか?フレデリック・ダネイ氏とマンフレッド・ベニントン・リー氏が共同で執筆活動をするときのペンネームだったのです。主な代表作として、『Yの悲劇』や『ローマ帽子の謎』等があります。
阿笠博士
コナン=新一である事を知っている一人であり、コナンに様々な発明品を作ってサポートしてくれる阿笠博士。名前の由来はエルキュール・ポワロとミス・ジェーン・マープルを生み出した、イギリスの女性推理作家『アガサ・クリスティ』から拝借されたものです。
ミステリーの女王とも呼ばれたアガサ・クリスティは『ABC殺人事件』『そして誰もいなくなった』『パディントン発4時50分』等の代表作があります。また、これらを原作にしたアニメ作品『アガサ・クリスティの名探偵ポワロとマープル』がNHKで製作され、ポワロを里見浩太朗さん、マープルを八千草薫さんが演じられるなど、今なお人気の高い推理小説家として今日まで続いています。
灰原哀
黒の組織から逃げ出し、コナンと共に組織の行方を追う同級生の灰原哀。名前の由来は、イギリスの女流推理作家、P・D・ジェイムズの作品に出てくる架空の探偵、コーデリア・グレイとアメリカの推理作家、サラ・パレツキーさんが創作した女性探偵V・I・ウォーショースキーの「I」から拝借したものです。
サラさんは71歳になった2018年現在でも創作活動を続けており、最新作に『フォールアウト』という作品があります。ちなみに阿笠博士は名前を『愛』にしたかったのですが、本人の希望で『悲しい哀』としたそうです、また、『哀』はシャーロック・ホームズシリーズに登場する架空の人物でオペラ歌手でもある、アイリーン・アドラーからも拝借したと青山先生の口から語られています。
服部平治
大阪で活躍する高校生探偵の服部平次。彼にも名前の由来があります。服部という姓は、ドラマ探偵物語で故・成田三樹夫さんが演じた服部刑事から。平次は野村胡堂の小説『銭形平次捕物控』の主人公、銭形平次から拝借したものです。
銭形平次は時代劇でも数々の作品が作られているので、ご覧になった方は多々いらっしゃるのでは?また、野村胡堂は音楽評論家としても活動していました。
遠山和葉
服部平次の幼なじみの遠山和葉。名前の由来は姓の遠山は、遠山の金さんでおなじみの『遠山金四郎』から。
遠山金四郎は、時代劇で表では遊び人として隠密行動をし、北町奉行所のお奉行様として悪を裁く主人公として有名です。ところが金四郎は架空の人物ではなく、実在した人物。本名は遠山景元と呼び、通称が金四郎であったのです。また、名前の和葉は、当時アシスタントだった方の夫人から拝借されたものだと、青山先生自身が語っていらっしゃいます。
少年探偵団
小嶋元太
少年探偵団の切り込み隊長、小島元太。名前の由来は、小説家、小峰元(こみねはじめ)から拝借したものです。代表作にはドラマ化もされた『アルキメデスは手を汚さない』や『ピタゴラス豆畑に死す』等があります。
円谷光彦
少年探偵団の頭脳であり、コナンと灰原がいないときのまとめ役、円谷光彦。名前の由来は2018年3月に他界した、内田康夫さんのミステリー小説『浅見光彦シリーズ』から拝借されています。
また、円谷という苗字は、鳥取県西部である伯耆国久米郡円谷村が起源と言われています。これはあくまで推測ですが、鳥取県出身の青山先生が光彦を考えた時、円谷という苗字が鳥取からルーツという事を知って、語呂合わせで円谷という苗字にしたのでは?と私は思います。
吉田歩美
少年探偵団のムードメーカーである吉田歩美。名前の由来は推理作家、北川歩実さんから拝借されたものです。
北川さんは1995年に『僕を殺した女』デビュー。2009年の『金のゆりかご』では16万部を超えるヒット作も出版しました。ただ、北川さんは覆面作家なので、素性は誰も知らず、男性であるか女性であるかは分かりません。
警察関係者
松本清長
警視庁刑事部捜査一課の元管理官であり、初登場時は警視。現在の階級は警視正です、松本清長(まつもときよなが)。娘の小百合は工藤新一、毛利蘭の中学生時代の音楽の先生でした。
名前の由来は小説家の松本清張(まつもとせいちょう)。『ゼロの焦点』『砂の器』といったベストセラーをはじめ、『かげろ絵図』や『火の路』といった古代史をテーマにした小説にも取り組んでいます。階級が警視相に昇進した事と、声優の加藤精三氏が鬼籍に入られた事もあり、現在は『名探偵コナン』に登場する割合が少なくなってしまいました。
茶木神太郎警視
警視庁刑事部捜査二課知能犯捜査係に所属する警視であり、怪盗キッドを追っている中森警部の上司でもあります。また、小五郎とは顔見知りでもあり、毛利、警視殿と呼び合う仲でもあります。
名前の由来は、ルバート・ケイス・チェスタートンによる推理小説『ブラウン神父シリーズ』から拝借されました。ブラウン神父はイギリス・サセックス教区のカトリック司祭にして、アマチュア探偵としても活躍。主な作品としては『ブラウン神父の童心』『ブラウン神父の秘密』などがあります。また原作者のチェスタトンはイギリスのロンドン生まれ。批評家や詩人としても活躍しました。
目暮十三警部
新一や小五郎が巻き込まれる事件をいつも担当している目暮警部。名前の由来は、フランスの小説家ジョルジュ・シムノンに登場する警察官『ジュール・フランソワ・アメデ・メグレ』から由来しているそうです。
作者のジョルジュ・シムノンはベルギー出身の小説家。代表作に『怪盗レトン』、『黄色い犬などがあります。また、名前の十三についてですが、これは劇場版第2作『14番目の標的(ターゲット)』で後付けされたものです。
横溝参悟
初登場時には埼玉県警に所属しており、現在は静岡県警に所属する横溝参悟警部。名前の由来は、金田一耕助シリーズの原作者、横溝正史から拝借されたもので、参悟というのは髪型がサンゴに似ているという事で、この名前がついたそうです。
金田一耕助シリーズは横溝正史の推理小説の代表作。『八つ墓村』や『獄門島』等の作品があります。また、少年マガジンで掲載中の『金田一少年の事件簿シリーズ』の主人公、金田一はじめは母方の祖父という設定です。なお横溝警部には双子の弟がおり、神奈川県警で勤務する重悟がいます。こちらの名前は、兄の参悟を数字にして掛け算の答えである、15から来ています。
山村ミサオ
群馬県警に所属し、小五郎同様とんちんかんな行動をする山村ミサオ警部。新一の母である有希子のファンで、彼女が主演した刑事ドラマを見て警察官になったそうです。名前の由来は、女性ミステリー作家の山村美沙から拝借したものです。
山村美紗は国内では『ミステリー界の女王』または『トリックの女王』とも呼ばれており、アメリカの雑誌記者キャサリン・ターナーを主人公シリーズでは、『花の棺』『百人一首殺人事件』といった長編シリーズを手掛けております。また、長女の山村紅葉さんは、2時間サスペンスドラマで多数の作品ドラマに出演しており、『2時間ドラマの裏女王』とまで言われるようになりました。
西村警部
北海道警捜査一課に所属する西村警部。出番は少ないですが彼にも名前の由来があります。名前の由来は、トラベルミステリーの第一人者である西村京太郎さんから。西村警部が初めて登場した事件は、寝台特急北斗星号の事件からなので、鉄道シリーズと関連があるということで選ばれたのでしょう。
さて、西村さんは十津川警部や左文字進など様々なトラベルミステリーを発表し、現在でも2時間サスペンスドラマにて多くの作品が放送されています。また、山村美紗とは家族ぐるみの交流があり、長女の紅葉さんは十津川警部シリーズにて、多くのドラマに出演されています。
高木渉
目暮警部の部下であり、佐藤刑事との恋仲でもある高木渉刑事。名前の由来は、演じている方が高木渉さんであるからです。
これは、アニメ収録の際「説明役に、もう一人刑事が欲しい」という監督の声で生まれ、演じている高木さんがとっさに「高木」と言ってしまい、そのままキャラ名になって原作に逆輸入されたわけです。
高木さんは、1966年生まれの声優でもあり、舞台俳優。1987年『ミスター味っ子』でデビューし、『名探偵コナン』は高木刑事の他、元太の声も充てられています。また代表作に『GTO』の鬼塚英吉。テレビ朝日の『ドラえもん』ではのび太達が通う学校の先生役を、田中亮一さんから引き継ぎ演じられています。その他にも、テレビドラマでは、大河ドラマ『真田丸』や、連続テレビ小説『半分、青い。』にも出演されるなど、多方面で活躍されています。
佐藤美和子
警視庁捜査一課の警部補で高木刑事と恋仲である佐藤美和子刑事。名前の由来は、原作者の青山先生の知人から拝借されたものです。ただ、本当に青山先生の友人に佐藤美和子さんという方はいらっしゃるのか、全く不明です。
白鳥任三郎
警視庁捜査一課の白鳥任三郎警部。彼は劇場版第1作『時計じかけの摩天楼』が初登場であり、その後、漫画やアニメに逆輸入されたキャラクターです。
白鳥という苗字は映画製作の際には決まっていたものの、任三郎というのは『14番目の標的』から採用されたもので、和製コロンボこと古畑任三郎刑事にあやかってつけられました。
『古畑任三郎』は、フジテレビで放送された三谷幸喜さん脚本の刑事ドラマ作品。田村正和さん主演でシリーズスペシャル含めて42回製作されました。ちなみに古畑任三郎刑事の階級は警部補です。
まとめ
『名探偵コナン』に登場するキャラクターの名前の由来、お判りになっていただけましたでしょうか。黒の組織は酒の種類、その他登場するキャラクターは演じている声優さんが、ご出演なさっていたアニメの名前をもじって、由来にする事が多いようです。今後も魅力あふれるキャラクターが登場する『探偵コナン』。事件にも注目ですが、キャラクターの名前にも注目ですね。